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宇宙船地球号に対しふさわしい問いかけをしているだろうか?

                   「アジア エンジニア」 1997年11月版

ピーター・マイソン

ワールドリーダー達は、たぶん最善の意を尽くして、環境問題について議論するためのサミットを次から次へと開催していますが、何一つとして変わっていないように思われます。今私達は違うアプローチの仕方を考える時代に突入しました。それは、世界規模の問題を世界規模で解決するアプローチです。

   5年前ワールドリーダー達による、かつてなかったほどの大きな会議が地球サミットとして、リオ・デ・ジャネイロで開かれました。彼らはその時に、この惑星に対しより責任を持つことを誓約しました。例えばそれは汚染を減らす、動植物を絶滅から守る、熱帯雨林を保護するなどといったことです。今年の初めの方に国連によって、集められた経過を査定するためリオ+5が開かれました。しかしほぼ全てのカテゴリーにおいて、客観的な立場にあるレポーター達は皆落第点を与えるでしょう。新聞や雑誌などの見出しは「ワールドリーダー達は地球は病んでいると認めた。しかし救済の同意には失敗した。」と、今にも叫びだしそうです。

世界の人口は、この5年間で5億人増え、大気汚染、特にグリーンハウス・ガスと呼ばれる二酸化炭素などの温室効果の原因となる気体の量は常に上昇しています。豊かな国と貧しい国との格差は広がる一方で、燃料や硬材を得るための森林伐採も続いています。それに加えてアナン国連事務総長は、国連ディベロプメントプログラムの年間レポートで「100にも及ぶ国々が今日15年前よりもさらに暮らし具合が悪く、13億人が一日一ドルにさえ満たない稼ぎで生活している。」と報告しています。

国連総会会長であるマレーシアのラザリ・イスマエル氏は、リオ+5の代表達に警告しています。「環境を破壊しながら生きることや、豊かな人間と貧しい人間という不平等を永続させている私たちは、すぐに後戻りのつかない状況に追い詰められるでしょう。種としての、一惑星としての私達は今崖っぷちにいるのです。」また環境擁護者、アメリカ副大統領ゴア氏は「私達は袖をまくりあげ、働きに出なければならない。」と宣言しました。G8によるデンバーサミットではアメリカ大統領クリントン氏がアメリカ経済のその強固さを自慢していますが、その一週間後、彼の国の二酸化炭素の放出が5%上昇したことでたしなめられました。

来月、先進国の温室効果ガス排出量削減の目標数値とその期限を決めるため、ワールドリーダー達はもう一度京都に招集されます。しかし騙されてはいけません。私達のリーダーは意志を持って集まり、サミットでとても素晴らしいスピーチをしますが、家へ帰るとそれまでと全く変わらない仕事をしています。古の言葉はこの状況を一番よく言い表しています。『私達が向かっている方向を変えない限り、私達が向かう場所そのままの所へ行き着くだろう。』

もしかしたら、私達は根本的に間違った質問をしているのかもしれません。もちろん、目の前に火を見たらそれを消そうとするのは当然のことです。しかし私達は今抱えている問題の原因をただ責めたり、次々にやってくる問題にバンドエイドを貼るだけで済まそうとしていませんか?

私は違ったアプローチの仕方を提案します。それは25年前に天才的な                     発明家であり、建築家であり、鑑識眼のある思想家であったバックミンスター・フラー博士によって発案されたものです。彼、「バッキー」は20世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチとも呼ばれ、次のような世界規模の疑問を唱えています。『環境、生態系へのダメージを与えることなく、また誰にも損害を与えることなく、この地球を可能な限り短い時間で100%全ての人間のために機能させるにはどうしたらいいか?』・・・これこそ私達が環境問題を考えていく上での初めの一歩としてふさわしいとは思いませんか?

電力のワールド・ワイド・ウェブ

   環境を長い年月の間保護すると同時に全ての人々の需要を満たすためのシステムをデザインすることは、より優れた工学技術的アプローチです。前に挙げた世界規模の疑問から、平和と環境を破壊しない開発のための一つの最高の戦略が明らかになりました。簡単に述べると、その計画とは世界中にあるRenewable Energyの資源を電力のために連結させるということです。今日の言葉で言うなら、Renewable資源を利用した「電力のワールド・ワイド・ウェブ」を作る、といった所でしょうか。

   多くの人々に未だ知られていませんが、このエネルギーネットワークの半分が既に世界中に存在しています。それは私達の家庭やビジネスを動かすためのエネルギーを届ける電子の高速道路といえます。しかし今日でも人類の三分の一がきれいな水や照明、食料や薬の冷蔵のための最も基本的な電力さえ手に入れることができないでいます。20億人にも上る彼らは、日常生活に必要なエネルギーを満たすために、未だ樹木や家畜の糞を燃やしています。その上現在ある地球の気候問題は、全体の80%のエネルギーの生産がガスやオイル、石炭、原子といった汚染や有毒な廃棄物の量を増やすNon-Renewable Energyに頼っていると言う事実に根をおろしています。

   電力のシステムを東西に連結させることは、日常生活における電力の需要の違いを一様にし、南北のつながりは季節による需要の違いを一様にします。私達の惑星は、風、水、太陽光、地熱、潮、バイオマスから採れる巨大なRenewable Energyの可能性に恵まれています。しかしながらこれらは大抵の場合遠く離れた地域、例えそれが近くの国にあったとしても私たちの都市や産業からは遠く離れた所にあります。現在では何千キロにも到達している安価な電力の伝達を用いれば、これらのRenewable Energyの資源を古びた化石燃料や原子力発電所の代わりとして使うことが出来るようになるのです。

遠い未来の計画?

   このような夢のような計画は概して未来の世代のものと見られがちです。しかしながらここ10年の間で、思いも寄らなかった国同士の国際的なつながりが見られるようになりました。ベルリンの壁が崩壊した後の東と西のドイツや、ワシントン条約からのイスラエルとヨルダン、そしてちょうど今年、トルコとイラン、アルゼンチンとチリ、そしてまたインドとパキスタンの間でも国境をまたぐ配電網が作られ始めました。この国際的なインフラの発展はこの先これらの国家間の貿易や平和、協力を助長するでしょう。

   20年前、国連と多数の専門家達がこの開発計画を吟味し、進めるべきと確信しました。しかしその当時は、冷戦によってどのような発展も許されない状況でした。今や敵は汚染、人口過剰、貧困となりました。これらの「火」を消すために私達は、リオ・デ・ジャネイロでは地球サミットを、カイロでは人口サミット、コペンハーゲンで社会サミット、北京で女性サミット、イスタンブールで都市サミットを開いてきました。しかしながらこれらの問題は未だに残り、年々大きくなっています。

   こういった問題を別々のものとして捉え取り組むことは、私達の相互社会の本質を無視しています。いよいよもっと大きな問いかけをする時代がやってきたのでしょう。どのようにして地球を全ての人類、環境のために機能させるか?私達の解決法は近年の地球の動向よりもより良い救済法を提案することを保障します。

著者について

   著者ピーター・マイソン氏は、世界中にRenewable Energyの資源を広めるための教育と研究を行う、アメリカ合衆国を本拠地とした非営利団体グローバル・エネルギー・ネットワーク・インスティテュート(GENI)の代表を務めています。これは20世紀の思想家R.バックミンスター・フラー博士のワールドゲームに基づいて、地球の最優先事項として提案された計画です。


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